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2012/3/14

経済産業情報

触媒による硝酸性窒素除去をリアルタイムで観察

この記事の要約

地下水汚染の原因となる硝酸性窒素の新たな除去技術として関心が高まっている合金触媒で、反応のプロセスを実反応条件下で観察することにウィーン工科大学の研究チームが成功した。同触媒の化学反応機構はこれまでほとんど解明されていな […]

地下水汚染の原因となる硝酸性窒素の新たな除去技術として関心が高まっている合金触媒で、反応のプロセスを実反応条件下で観察することにウィーン工科大学の研究チームが成功した。同触媒の化学反応機構はこれまでほとんど解明されていなかったことから、副生成物を産生しない金属組成など、より効率の高い触媒の開発につながるとチーム期待を寄せる。

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硝酸性窒素は硝酸塩として含まれている窒素。肥料や家畜のふん尿、生活排水に含まれるアンモニウムが酸化されたもので、ヒトや動物が井戸水や地下水などを通して多量に摂取すると、メトヘモグロビン血症(いわゆるブルーベビー症)を起こす恐れがある。

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硝酸性窒素汚染水の浄化では主に、微生物による脱窒、逆浸透膜、イオン交換樹脂といった手法が用いられるが、◇温度制御など管理に手間がかかる◇汚泥や廃液が発生する◇大量のエネルギーを消費する――などの難点がある。こうしたなか、副産物が少ない触媒による浄化技術への関心が近年、急速に高まっている。触媒の組成として貴金属(インジウム、パラジウム)と銅の合金が有力視されているが、それぞれの金属がどう反応にかかわっているのかなどの詳細はあまり解明されていないのが実情だ。

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ウィーン工大の研究チームは今回、アルミナ基板上に作成した銅-インジウム系触媒と銅-パラジウム系触媒を用い、パウル・シェラー研究所(PSI)にある高分解能蛍光分光X線吸収分光検出装置(HERFD-XAS)使って基板上に現れる窒素化合物の種類や銅の変化を測定した。その結果、最初は貴金属と合金を組成していた銅が反応の過程で分離し単体(Cu)となり、硝酸から酸素を奪って酸化第一銅(Cu2O)、酸化第二銅(CuO)などに変化することを突き止めた。また、酸化銅から酸素を引き離す(=外部から供給される水素と反応させ水を生成する)反応ではパラジウムのほうが銅の活性化に優れていることもあわせて観察した。

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研究成果は『Catalysis Science & Technology』に掲載された。

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