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2013/10/2

ゲシェフトフューラーの豆知識

請負契約でも命令関係があれば雇用契約に=最高裁

この記事の要約

企業などは業務の一部を外部の企業ないし自営業者に委託することがある。その際、両者は対等の立場で請負契約(Werkvertrag)を結び、請け負った側は契約した業務の達成を義務づけられ、委託を行った側は報酬を支払わなければ […]

企業などは業務の一部を外部の企業ないし自営業者に委託することがある。その際、両者は対等の立場で請負契約(Werkvertrag)を結び、請け負った側は契約した業務の達成を義務づけられ、委託を行った側は報酬を支払わなければならない。これは民法典(BGB)631条に記されたルールである。

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一方、BGB611条には雇用契約(Dienstvertrag)の定義がある。そのメルクマールは、業務の遂行者は命令に従って仕事を行い、自由裁量を認められていないというもので、上下関係が前提となっている。

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ドイツでは近年、実質的には雇用契約であるにもかかわらず、形式上は請負契約の形を取る取引が増え、大きな問題となっている。企業などにはコスト削減のメリットがあるものの、そうした企業と契約する「見かけ上の自営業者」は「生殺与奪権」を事実上、契約先の企業に握られているうえ、被用者と異なり解雇保護ルールも適用されないためだ。

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最高裁の連邦労働裁判所(BAG)は9月25日に下した判決(訴訟番号:10 AZR 282/12)で、こうした請負契約の濫用に歯止めをかける判断基準を提示したので、ここで取り上げてみる。

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裁判は文化財データの作成などを2005年から断続的に請け負っていた男性が委託元のバイエルン州を相手取って起こしたもの。同男性は2009年春に結んだ請負契約で、フュルト郡とニュルンベルク郡の遺跡データの整理を3万1,200ユーロで請け負った。期限は11月30日となっていた。

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同男性は業務の遂行に当たって常に州文化財保護局に出向き、パソコンを備えた机で毎日7時半から17時まで仕事を行った。同保護局のカギは渡されていなかった。

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同男性はこれが実質的には雇用契約に当たるとして、正規の職員として採用することを要求。その確認を求める裁判を起こした。

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1審と2審は原告勝訴を言い渡し、最終審のBAGも下級審判決を支持した。判決理由で裁判官は、形式的には請負契約であっても実質的に雇用契約であれば、雇用契約になると指摘。原告男性のケースでは総合的にみて雇用契約に当るとの判断を示した。

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