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2014/2/26

ゲシェフトフューラーの豆知識

収賄社員への企業年金支給減額は妥当か

この記事の要約

収賄行為によって会社に損害をもたらした社員の企業年金を減額することは果たして妥当か――。この問題をめぐる係争で最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が昨年11月に判決(訴訟番号:3 AZR 274/12)を下したので、ここで取 […]

収賄行為によって会社に損害をもたらした社員の企業年金を減額することは果たして妥当か――。この問題をめぐる係争で最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が昨年11月に判決(訴訟番号:3 AZR 274/12)を下したので、ここで取り上げてみる。

裁判は自動車メーカーの子会社(M社)に法務部長として出向していた元社員が出向元メーカーを相手取って起こしたもの。同社員はM社で、顧客が料金を支払えなくなったリース車両をディーラーに販売する業務に1985年から携わっていた。92年~96年にかけてディーラーから総額30万マルクの賄賂を受け取っていたことが当局の捜査で97年に発覚。これを受け、同社員は解雇され、裁判で刑事罰も言い渡された。また、出向元メーカーに対し20万マルクを支払ったほか、さらに4万マルクを月500マルクで分割払いすることを取り決めた。

同社員は2010年2月に年金受給者となり、M社から企業年金を受け取るようになった。受給額は月696.51ユーロで、賄賂を受け取っていた92~96年の4年分については支給されなかった(4年分が支給されれば、受給額は1,000.55ユーロに上るはずだった)。

同社員はこれを不当として提訴。最高裁のBAGはこの主張を支持する判決を下した。判決理由で裁判官は、企業年金には被用者が行った労働に対する報酬という性質があり、被用者の行為により企業が受けた損害が会社の存続を危うくしない限り、支給を拒否することはできないと指摘。原告は被告企業に著しい損害は与えなかったとの判断を示した。