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2014/11/26

経済産業情報

「アベノミクスは成功しないと思っていた」 ドイツ銀CEOが批判、消費税引き上げも「誤り」

この記事の要約

日本が景気後退局面(2四半期以上続くマイナス成長)に入ったことを受けて、同国経済の先行きへの懸念が高まっている。ドイツ銀行のユルゲン・フィッチェン共同最高経営責任者(CEO)は21日、ベトナムのホーチミン市で開催された「 […]

日本が景気後退局面(2四半期以上続くマイナス成長)に入ったことを受けて、同国経済の先行きへの懸念が高まっている。ドイツ銀行のユルゲン・フィッチェン共同最高経営責任者(CEO)は21日、ベトナムのホーチミン市で開催された「ドイツ経済界アジア・太平洋会議(APK)」で、「私はアベノミクスが成功しないと初めから思っていた」と明言。日本経済・財政の再建は極めて難しいとの見方を示した。

同CEOは「日本の財政赤字の規模はただ息をのむばかりだ」と述べたうえで、金融緩和を一段と推し進めても効果はないとの見方を示した。高齢者はどの国でも消費に慎重であり、日本のような高齢化が大幅に進んだ社会では市場に大量の資金を供給しても消費の喚起につながらないとしている。また、日本は経済危機が長期化した結果、消費者が将来に希望を持てなくなっていることもマイナス要因だとしている。

4月に実施した3%の消費税率引き上げについては「現在の状況下では全くの誤りだ」と指摘。そもそも同税率を5%引き上げても財政再建には足りないとの認識を示した。

そのうえで、日本に必要なのは構造改革だとの見方を提示し、理論的には若い移民を大量に受け入れるのが望ましいと指摘した。ただ、日本は閉鎖的な社会であるため、そうした政策は実施されないだろうと述べている。

英金融大手HSBCのチーフエコノミスト、フレデリック・ノイマン氏(アジア地域担当)もAPKで高齢化の問題に言及。日本は生産年齢人口(15~64歳)が1997年から減少しており、現在は年1%のスピードで減っていると指摘。「日本は始まりに過ぎない」と述べ、今後は高齢化とそれに伴う経済の低迷が他の国にも広がるとの見方を示した。中国は来年から生産年齢人口が減少に転じ、「人口転換で日本の後を追う」としている。

一方、金融緩和で円安が進んでいることに対しては独経済界で懸念が強まっている。ドイツと日本は産業構造が似ており、自動車、機械などが輸出市場で競合しているためだ。コンサルティング大手ローランド・ベルガーと全国紙『ヴェルト』がドイツのトップマネージャー144人を対象に実施した簡易アンケート調査では、円安に伴い日本の製造業の競争力が向上するとの回答が約50%に達した。