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2015/3/4

ゲシェフトフューラーの豆知識

懲戒解雇時の有給休暇の取り扱いで最高裁判決

この記事の要約

被用者の不適切な行動を理由に即時解雇を行う場合、雇用主は通常、解雇予告期間(解雇通告日から発効日までの期間)を設けた通常解雇もあわせて通告する。即時解雇は通常解雇よりもハードルが高く、裁判で認められない可能性が通常解雇よ […]

被用者の不適切な行動を理由に即時解雇を行う場合、雇用主は通常、解雇予告期間(解雇通告日から発効日までの期間)を設けた通常解雇もあわせて通告する。即時解雇は通常解雇よりもハードルが高く、裁判で認められない可能性が通常解雇よりも高いためだ。その際、解雇通知書には、「通常解雇が適用される際は有給休暇を算入の上で勤務義務を免除する」といった文面が盛り込まれる。つまり、解雇予告期間中は勤務をすべて免除するが、同期間には未消化の有給休暇がすべて含まれるという意味である。

こうした文面を解雇通知書に盛り込むことで雇用主はこれまで、有給休暇を金銭に換算して支給する義務を免除されてきた。だが、最高裁の連邦労働裁判所(BAG)は2月に下した判決(訴訟番号:9 AZR 455/13)でこの判例を覆した。

裁判は手工業分野の企業を相手取って同社の元社員が起こしたもの。被告企業は2011年5月19日付の文書で、同社員に即時解雇を通告するとともに、同年末を解雇日とする通常解雇も通告した。

これに対し同社員は解雇無効の確認を求める訴訟を起こしたものの、最終的に和解。解雇訴訟はこれで終了した。

原告はその後、年次有給休暇が計15.5日分、未消化のまま残っているとして、これを換金して支給することを同社に要求する訴訟を起こした。この裁判では1審で敗訴、2審では勝訴した。

最終審のBAGは、有給休暇が勤務から免除されるとともに、同免除期間中に給与の支給も受けるという2つの権利からなることを踏まえたうえで、解雇文書中に「通常解雇が適用される際は有給休暇を算入の上で勤務義務を免除する」と盛り込むだけでは、勤務免除中に給与の支給を受けるという有給休暇のもう1つの権利は満たされないと指摘した。BAGは欧州司法裁判所(ECJ)の判決を踏まえ、この判断を示した。

ただ、裁判官は原告が解雇訴訟で被告と和解しお互いの権利・義務を取り決めたことも指摘。和解契約を締結したことにより、原告は未消化の有給休暇を金銭に換算して受給する権利を喪失したとの判断を示した。

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