被用者が雇用主と締結した労働契約の取り決めが、労働組合が業界団体ないし個々の企業と締結した協定(労使協定)よりも被用者にとって有利な場合は、労働契約の取り決めが適用される。これは労使協定法(TVG)4条3項に規定されたルールである。この規定をめぐる係争で、最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が4月に判決を下したので、ここで取り上げてみる。
裁判は電気通信関連の企業の被用者が同社を相手取って起こしたもの。原告はもともとドイツテレコムの社員だったが、所属部門が2007年6月25日付で買収されたことで被告企業の社員となった。
被告は同買収の際、サービス労組Verdiとの間で労使協定を締結した。これにより労働時間が週34時間から38時間に引き上げられたほか、給与体系も変更された。
これに対し原告は、労働時間と給与の規定は労働契約の取り決めの方が自らにとって有利だと主張。自身の労働時間は労働契約に基づき現在も週34時間であり、残り4時間(38時間-34時間)は残業に当たるとして、その分の支払いを要求した。これが受け入れられなかったため提訴した。
原告は2審で勝訴したものの、最終審のBAGは敗訴を言い渡した。判決理由で裁判官は、被告企業の買収後に労働時間は長くなったが、賃金も増えたと指摘。原告の労働契約は総合的に判断して、被告がVerdiとの間で結んだ労使協定よりも有利だとは言い切れないとして、原告の勤務時間と給与には労使協定の取り決めが適用されるとの判断を示した。