欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2015/3/9

EUその他

18年まで国際ローミング料上乗せ容認、通信量に応じた料金システム導入へ

この記事の要約

EU加盟国は4日の大使級会合で、携帯電話のローミング(相互接続)料金について協議し、域内の他の国で携帯電話を使用する際に料金を上乗せするシステムの撤廃を2018年以降に先送りする代わりに、全体として料金水準を引き下げるた […]

EU加盟国は4日の大使級会合で、携帯電話のローミング(相互接続)料金について協議し、域内の他の国で携帯電話を使用する際に料金を上乗せするシステムの撤廃を2018年以降に先送りする代わりに、全体として料金水準を引き下げるための新ルールを導入することで合意した。欧州議会は今年12月までに国際ローミング料金を国内と同一水準にすることを事業者に義務づける規制案を可決しており、今後はEU議長国ラトビアと欧州議会の間で交渉が進められる。

EUでは07年6月に採択された「携帯電話のローミングに関する規則」に基づき、域内の他の国で音声通話、ショートメッセージサービス(SMS)、データ通信を利用する際のローミング料金が段階的に引き下げられている。欧州委員会は通信分野における単一市場の創設を目的とした規制改革の一環として、事業者に対して16年末までに国際ローミング料金の廃止を義務づける規制案を提示。欧州議会は昨年4月、実施期限を1年早めて15年12月15日とする修正案を可決し、加盟国の間で検討が続いていた。

大使級会合で合意した案によると、事業者は予め通信容量の上限値を設定し、利用した通信量がその範囲内であれば、他の国で各種サービスを利用する際のローミング料金を国内と同一水準に抑えなければならない。上限を超えた場合は利用者に追加料金を請求できるが、他社の回線を使用する際に支払うホールセール料金を超えてはならない。欧州委が進捗を確認し、国際ローミング料金の撤廃を視野に、18年半ばまでに追加的な規制が必要か判断する。

一方、加盟国はインターネット接続事業者(ISP)が自社と競合するサービスなどに対し、意図的に通信速度を遅くしたり、データ通信量を制限するなどの差別的行為を禁止する「ネットワーク中立性」の原則をEU共通のルールとして整備する方針で一致した。ただし、「一定水準の品質を要求するサービス」に関しては、一般的なインターネット接続に支障が出ないことを条件に、追加料金を徴収する代わりに高速接続を優先的に提供する(いわゆる「ファストレーン」)といった事業者間の取り決めを認めるとしており、先に米国で導入が決まったネット中立性の新規則に比べると柔軟な内容になっている。