2011/1/12

チェコ・スロバキア

国営電力CEZ、ルーマニア原発プロジェクトから撤退

この記事の要約

チェコ国営電力会社CEZは4日、ルーマニアの原子力発電所建設プロジェクトから撤退したと発表した。国内事業の強化に向けて、国外事業を整理する経営戦略に沿うもので、すでに昨年9月、撤退を表明していた。\ 今回手放したのは、ル […]

チェコ国営電力会社CEZは4日、ルーマニアの原子力発電所建設プロジェクトから撤退したと発表した。国内事業の強化に向けて、国外事業を整理する経営戦略に沿うもので、すでに昨年9月、撤退を表明していた。

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今回手放したのは、ルーマニア南東部に位置するチェルナボダ原発の原子炉新設に携わるプロジェクト会社EnergoNuclear SAの株式9.15%。取得時と同じ額(名目額)で、EnergoNuclearの筆頭株主であるルーマニア原子力公社(Societatea Nationala Nuclearelectrica:SNN)に売却した。

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CEZは現地メディアに対し、原子力発電事業では重点をチェコとスロバキアに置くと説明した。同時に、国外プロジェクトでは多数株を確保するとし、EnergoNuclearへの出資比率が小さかったことが撤退につながったと理由づけた。

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チェルナボダ原発はカナダで開発された重水冷却圧力管型炉(CANDU)を採用しており、1号炉が1996年、2号炉が2007年に稼働した。出力は各655メガワットで、国内電力需要の約20%をまかなう。

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新設される3号炉と4号炉は出力がそれぞれ720メガワットとなる予定だ。CEZがプロジェクト参加を表明した07年の時点では、3号炉が14年、4号炉が15年に運転を開始する見通しだった。しかし、原子力広報団体NucNetによると、現状では3号炉の稼働は16年にずれ込み、4号炉も遅延が避けられないもようだ。総工費の見積もり額も07年の22億米ドルから40億ドルに膨らんでいる。

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CEZの撤退で、EnergoNuclearの株主構成はSNN(60.15%)、アルセロール・ミタル(6.2%)、 GDFスエズ(9.15%)、エネル(9.15%)、イベルドローラ(6.2%)、 独RWE(9.15%)となった。

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■ 再可エネ事業は強化

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CEZはルーマニアで原発事業から撤退する一方、再生可能エネルギー事業を強化する。同社は6日、ルーマニア子会社が現地の水力発電会社TMK Hydroenergy Powerを100%買収したと発表した。買収額は明らかにしていない。TMKは同国西部カラシュ=セヴェリン県の4カ所でダムと小規模水力発電所を運営している。総発電能力は18メガワット(MW)。

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国際会計事務所KPGMによると、ルーマニアの水力発電能力は10MW以上の発電施設が4,859MW、10MW未満の小規模施設が948MW。同国は山地と河川(全長3万キロ以上)、湖(2,500カ所)に恵まれており、水力発電事業拡大のポテンシャルは大きいという。

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また、風力発電にも適しており、CEZは昨年、ドブロジャ地方のFantanele-Cogealacで 風力発電所の稼動を開始した。発電能力は300MW。最終的には600MWに引き上げる予定で、内陸部の風力発電所としては欧州最大となる。

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