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2010/8/11

経済産業情報

医薬品強制割引に法の盲点、価格操作で製薬会社が損失回避

この記事の要約

今月1日に導入された特許薬の強制割引制度が早くもほころび出している。「自発的な値下げ分は強制割引に算入する」という規定の裏をかいて、一旦値上げしたのちに値下げし、実質的な薬価がほとんど変わらないようにした製薬会社が多いの […]

今月1日に導入された特許薬の強制割引制度が早くもほころび出している。「自発的な値下げ分は強制割引に算入する」という規定の裏をかいて、一旦値上げしたのちに値下げし、実質的な薬価がほとんど変わらないようにした製薬会社が多いのだ。強制割引実施前の値上げを禁止する規定がなかったことを悪用した格好で、政府や公的健保関係者は製薬会社を厳しく批判。政府は法改正に向けて動きだした。

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強制割引制度は公的健保と価格契約が結ばれていない処方薬が対象で、2010年8月~13年12月の期間、強制割引率をそれまでの6%から16%に引き上げるほか、薬価を09年8月1日時点のものに固定することを骨子としている。先月7日に連邦参議院で了承され、成立した。

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薬価に異変が起こったのはこの後だ。週刊誌『シュピーゲル』によると、製薬会社は7月中旬、一部製品を値上げし2週間後に元の値に戻した。薬局の調べでは顕著な値上げ・値下げの動きがあった医薬品は数百種類に上る。

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また『南ドイツ新聞』によると、メルク・セロノの抗がん剤「Erbitux」の価格は先月、一時的に1,380ユーロから1,517ユーロに引き上げられ、再び1,380ユーロに下げられた。このため、「自発的な値下げ率」として9%が強制割引に算入。実質的な強制割引率は以前とほぼ同じ7%にとどまり、売り上げは大きく目減りしなかった。

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公的健保の上部組織は、こうした見せかけの値下げによって生じた損害は数千万ユーロに上るとして激しく非難した。メルク・セロノの担当者はシュピーゲル誌に対し、「強制割引による負担は重すぎる。損失を少しでも和らげるために、ごく一部の製品で法的な価格形成の可能性を利用したまで」と話し、法の不整備を突いたことを認めている。

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