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2010/8/11

ゲシェフトフューラーの豆知識

社用車の貸与、長期病休の場合は取り消し可

この記事の要約

ドイツには社員に社用車の私的利用を認めている企業が多い。社員は大抵、通勤や行楽なども含め自由に使うことができる。これは非金銭的な利益供与であり、給与の一部とみなされる。このため、退職・解雇などで会社を去る社員は社用車を返 […]

ドイツには社員に社用車の私的利用を認めている企業が多い。社員は大抵、通勤や行楽なども含め自由に使うことができる。これは非金銭的な利益供与であり、給与の一部とみなされる。このため、退職・解雇などで会社を去る社員は社用車を返還しなければならない。では、6週間を超える長期病休の結果、給与支給が止まった場合はどうなるのだろうか。今回はこの問題を裁判に即して取り上げる。

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この裁判を起こしたのはフォルクスワーゲン(VW)の中型車「パサート」を貸与されていた建設会社勤めの高齢社員で、月284.65ユーロの便宜を受けているとみなされていた。同社員は2008年3月3日~12月15日までのおよそ9カ月半、病気で欠勤。病欠7週目の4月14日以降は給与支給が止まり、加入する民間健保から疾病保険金を受けるようになった。

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同社用車のリース契約が切れることを受け雇用主は11月7日付で同社員に文書を送付し、同13日に車を返還するよう要求した。原告はこれに応じた。

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病休明け2日目の12月17日、同社員は超小型車「スマート」を貸与されたが、閉所恐怖症を理由に拒否したため、翌18日、フォードのコンパクトカー「フォーカス」を貸し与えられた。

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その際、パサートを返還した11月13日~12月17日までの約1カ月間、社用車を利用できなかったとして、1日当たり9.36ユーロを支給するよう要求。雇用主がこれを拒否したため提訴した。

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第1審のシュツットガルト労働裁判所は原告の訴えを棄却(訴訟番号:20 Ca 1933/08)。第2審のバーデン・ヴュルテンベルク州裁判所もこの判決を支持した(訴訟番号:15 Sa 25/09)。判決理由で同州裁の裁判官は、社用車の貸与が給与の一部であることを確認。そのうえで、病欠期間の長期化に伴い給与の支給義務がなくなれば、雇用主は社用車返還を要求できるとの判断を示した。

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