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2010/8/11

総合 - ドイツ経済ニュース

経済回復が加速、第2四半期成長率は1%以上に

この記事の要約

ドイツ経済の回復が力強さを増してきた。景気のけん引車である輸出は5月と6月にそれぞれ前年同月から約30%増加。5-6月期の製造業受注高も前の期の3-4月を3.2%上回っており、経済研究所や金融機関は2010年の国内総生産 […]

ドイツ経済の回復が力強さを増してきた。景気のけん引車である輸出は5月と6月にそれぞれ前年同月から約30%増加。5-6月期の製造業受注高も前の期の3-4月を3.2%上回っており、経済研究所や金融機関は2010年の国内総生産(GDP)予測を相次いで引き上げ始めた。好調な外需の動力が企業投資や個人消費に伝わり景気のすそ野が広がるとの見方もある。

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ドイツの景気指標はこのところ明るさを増している。先月下旬から今月上旬にかけて発表された主な指標をみると、7月のIfo企業景況感指数は前月の101.8から106.2へと4.4ポイント上昇。上げ幅は1990年のドイツ統一後、最大となった。6月の輸出高も前年同月比28.5%増となり、4カ月連続で2ケタ成長を記録している。これらの数値はエコノミストらの事前予想を大きく上回っており、独商工会議所連合会(DIHK)は9日、2011年の輸出額は過去最高となった08年の水準(9,840億ユーロ)までほぼ回復するとの見通しを示した。

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経済回復の加速が鮮明になったのは第2四半期に入ってからだ。ギリシャやスペインなどの財政問題を受け期初には景気の先行き懸念がやや強まったものの、実体経済に関する極めて良好なデータが増えるにつれて状況は変化。同四半期のGDP成長率は前期比で実質1%を超えるというのが支配的な見方となっており、同1.5%以上に達するとの予想もある。

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第3四半期以降は第2四半期の急成長の反動などで景気が減速する公算が高いものの、企業投資や個人消費が拡大する可能性も大きい。受注増を受けメーカーが増産に乗り出したことで雇用情勢が好転し、設備投資を拡大する動きも強まってきたためだ。

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経済紙『ハンデルスブラット』によると、DAX(ドイツ株価指数)30社の7月下旬時点の国内求人件数は1万人に達し、3カ月前の2倍以上に拡大した。またDIHKは6日、会員企業アンケート調査をもとに、従業員数500人未満の中小企業だけで年内に10万人の雇用を創出するとの予想を発表した。製造業では化学、製薬、電機などの輸出産業で新規採用の意欲が高い。中国をはじめとする新興国での事業の急速な拡大が国内雇用にもプラス効果をもたらしている。

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DIHKが4~5月に実施した別の会員企業アンケート調査では、投資額を「増やす」予定の企業が25%となり、経済危機の発生後初めて「減らす」(21%)を上回った。特に化学、医療機器、自動車で投資意欲が高い。

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雇用の拡大はすでに消費者マインドに反映されている。市場調査大手GfKが7月下旬に発表したドイツ消費者景況感指数の8月向け予測値は3.9となり前月の3.6から0.3ポイント上昇。所得の見通しに関する7月の指数(8月向け予測値の算出基準の1つ)は前月の8.2から29.1へと大きく上昇した。

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貸し渋り懸念解消

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経済界がこれまで批判してきた銀行の融資抑制も着実に弱まっている。Ifo経済研究所が7月下旬に発表した銀行融資に関する企業アンケート調査では「融資が抑制的だ」とする回答が31.6%となり7カ月連続で低下した。また独連邦銀行(中央銀行)は28日、金融機関などを対象に実施した聞き取り調査をもとに、企業向け融資は今後1年間、増加していくと指摘。銀行融資問題が経済回復の足かせになることはないとの見方を示した。ブリューデルレ連邦経済相はリーマンショック後に導入した企業向けの資金支援制度(ドイツ産業基金)を予定通り今年末で廃止する意向だ。今年はGDP成長率で2~2.6%の高成長が見込まれている。

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景気の懸念材料としては◇世界経済をけん引する中国の経済減速や不良債権問題、不動産バブル◇米国経済の弱含み◇最大の輸出先である欧州諸国の財政再建に伴う需要の減退◇世界各国の景気刺激策の終了――などが挙げられている。ドイツ経済は輸出を最大の動力源としているためだ。エコノミストらは特に、生産拠点・販売先として関係を急速に深めている中国経済の陰りに関心を向けている。(次ページに関連記事)

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