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2011/8/3

ゲシェフトフューラーの豆知識

「かしこまりました総統」、初回であれば警告が妥当

この記事の要約

ナチスの用語を用いることはドイツではいかなる場面でも避けた方が良い。たとえば「ハイル・ヒトラー」と冗談のつもりで言っても、聞き手はそうは受け取らず、不快感を示すことも多いためだ。仕事の場でそうした言葉づかいをした場合は処 […]

ナチスの用語を用いることはドイツではいかなる場面でも避けた方が良い。たとえば「ハイル・ヒトラー」と冗談のつもりで言っても、聞き手はそうは受け取らず、不快感を示すことも多いためだ。仕事の場でそうした言葉づかいをした場合は処分の対象にもなる。ここではラインラント・ファルツ州労働裁判所が1月に下した判決(訴訟番号:11 Sa 353/10)に即してこの問題をお伝えする。

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裁判を起こしたのはディスカウントスーパーに勤務する職員。2008年9月15日に同僚Kから電話で売上報告をすみやかに提出するよう督促された際、「かしこまりました総統(Jawohl mein Fuehrer)」と回答した。この表現はナチスの時代に総統ヒトラーに対する挨拶の言葉として常用されたもので、現在のドイツでは禁句である。Kは電話のやり取りについて上司Fに報告。Fはその後、原告職員に電話しその事実を確認した。

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雇用主がこれを受け原告に即時解雇を通告したため、原告はその取り消しを求めて提訴した。この裁判は即時解雇を無効とするラインラント・ファルツ州労裁の判決で終了したが、雇用主がこれを受けて予告期限付きの通常解雇を言い渡したため、新たな裁判に発展した。

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この裁判で同州労裁は通常解雇も無効との判決を下した。判決理由で裁判官は、ナチス用語の使用は解雇理由となりうるが、解雇できるのは原告が今後も同じ過ちを犯すことが予測される場合に限られると指摘。問題発言を過去に行っていない原告については同じ過ちを犯すと予測することはできないとして、まずは警告処分が妥当だとの判断を示した。

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