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2014/10/1

総合 - ドイツ経済ニュース

「産業立地競争力が低下」、バリューチェーン断絶に化学業界が警鐘

この記事の要約

独化学工業会(VCI)は9月26日、コンサルティング会社オクスフォード・エコノミクスの調査をもとに作成したレポートを発表し、化学産業立地としてドイツの競争力を低下していると指摘した。「化学産業の重要な部分が国外に流出する […]

独化学工業会(VCI)は9月26日、コンサルティング会社オクスフォード・エコノミクスの調査をもとに作成したレポートを発表し、化学産業立地としてドイツの競争力を低下していると指摘した。「化学産業の重要な部分が国外に流出するとバリューチェーン(価値連鎖)が断絶しドイツの産業ネットワーク全体が危機にさらされる」(カールルートヴィヒ・クレイ会長)として、警鐘を鳴らしている。

世界の化学輸出市場(製薬を含む)に占めるドイツの割合は昨年11%となり、1995年の15%から4ポイント低下した(グラフ1を参照)。ドイツの輸出高は伸びたものの、市場の急成長(3,000億ユーロから5倍弱の1兆4,000億ユーロ)に追いつかない状況だ。勢力を強めたのは中国やインド、サウジアラビアなどの新興諸国で、中国のシェアは95年の2%から6%に拡大した。

VCIはドイツの輸出シェアが低下した主な理由として産業立地競争力の低下を挙げたうえで、同競争力を決定する最大の要因としてエネルギー・原料コスト、業界の研究開発費の2つを指摘した。交通インフラの質、投資額、為替レート、税、規制に伴うコスト、産業ネットワークの密度も重要だとしている。

クレイ会長は「エネルギーコストの上昇は技術革新をもたらし、最終的に産業競争力の上昇につながる」と主張する政治家がいることを指摘したうえで、オクスフォード・エコノミクスの調査では、過度に高いエネルギー価格が産業立地競争力のマイナス要因となり、輸出市場シェアの低下をもたらしていることが確認されたと断言。再生可能エネルギーの急速拡大を目指すドイツの「エネルギー転換政策」は電力価格の上昇をもたらしているとして、政策の軌道修正を求めた。シェール革命の効果でエネルギー価格が低下した米国は産業競争力を高めているとも指摘している。

世界の化学業界(製薬を除く)の研究開発費は昨年1,122億ユーロとなり、95年の388億ユーロから大きく拡大した。国別のシェアをみると、ドイツが16%から10%に低下したのに対し、中国は1%から22%へと急上昇している(グラフ2を参照)。クレイ会長は研究開発の規模とともに、その成果を画期的な製品の市場投入につなげることが大切だとしている。

同会長は独化学業界の国外投資が大幅に増えている一方で、国内投資は減価償却とほぼ同水準にとどまり拡大していないことも指摘。その原因の一部はエネルギー価格の上昇や過度の温暖化対策など政治に起因していると批判した。