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2014/12/17

総合 - ドイツ経済ニュース

ドイツはブロードバンド後進国、経済界に危機感

この記事の要約

独連邦経済省は12日、情報通信技術(ICT)の産業立地に関するレポート『モニタリングレポート デジタル経済2014』を発表した。ドイツは国際ランキングで総合5位(2013年)につけたものの、ブロードバンドの整備で大幅に後 […]

独連邦経済省は12日、情報通信技術(ICT)の産業立地に関するレポート『モニタリングレポート デジタル経済2014』を発表した。ドイツは国際ランキングで総合5位(2013年)につけたものの、ブロードバンドの整備で大幅に後れを取っていることが判明しており、ICTを活用して産業競争力を強化する官民共同プロジェクト「インダストリー4.0」に黄信号が灯りそうだ。

同レポートは経済省の委託を受けて調査会社TNSインフラテストが作成したもので、計15カ国のICT産業立地競争力を市場、インフラ、利用度、起業・技術革新など合わせて33の項目で評価している。それによると、米国は前年同様ダントツの1位で、総合得点は81に達した。2位は韓国(54)、3位は英国と日本(53)で、5位のドイツは47だった。(グラフ1を参照)

一方、ドイツの通信網に占める光通信の割合は1%に届いておらず、欧州で最低だった。レポートは「高性能なブロバン通信網が全国に行き渡っていない国に企業は拠点を置くことができない」とドイツの現状を批判した。

ドイツには競争力の高い中小・中堅企業が都市部のほか地方にも多く、これが経済の屋台骨となっている。ただ、地方では通信網の近代化が遅れており、業務に大きな支障が出ている。

牧歌的な風景が広がる西南ドイツのショーナハ村。同村にはドライバーなどの作業用工具を製造する中堅企業ビーハがある。世界的に有名なメーカーだが、同地の通信速度は光通信網が敷設されているベトナム工場の10分の1と極端に遅い。外部のクラウドサービスを仮に利用するとデータ通信そのものが麻痺してしまう状況だ。

田舎で退屈な同村に住むことを嫌う設計担当者は車で50分ほど離れたヴァルトキルヒ市の職場で仕事をしている。シュバルツバルト(黒い森)最大の都市フライブルクに近いためだ。だが、ショーナハ本社のサーバーにある設計図面をヴァルトキルヒの職場からダウンロードするには多くの時間を要し無駄が多い。通信インフラが近代化されなければ将来的に本社の移転も検討しなければならないと経営者は頭を悩ませている。

こうした問題を抱える企業が多いことに経済界は危機感を持っている。工場の生産システムがブロバン通信網を介して外部と密接につながることはインダストリー4.0の前提条件であり、現状を放置すれば地方の優良企業の競争力が弱まるためだ。

人口密度の低い地域でブロバン通信網が普及しない背景には敷設しても採算が合わないため、通信事業者が投資を見合わせていることがある。

経済紙『ハンデルスブラット』によると、独産業連盟(BDI)はこうした状況の改善に向けた提言書を作成。規制を緩和して通信会社が投資しやすい環境を整えることを政府に要求した。来年上半期に行う移動通信の周波数オークションで得られる収入につては、民間投資では採算が合わない人口希薄地域のブロバン通信網の整備に回すよう求めている。

経済省によると、国内16州のなかでブロバン通信網(通信速度50メガビット/秒以上)普及率のトップグループを形成するのはブレーメン、ハンブルク、ベルリンで、すべて都市州となっている。最下位グループは東部の5州が占める。(グラフ2を参照)