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2015/6/17

ゲシェフトフューラーの豆知識

新規採用の労使共同決定権で最高裁判決

この記事の要約

従業員を新規採用する場合、企業は応募者の書類を従業員の代表機関である事業所委員会(Betriebsrat)に提示したうえで、選考結果への承認を得なければならない。これは事業所体制法(BetrVG)99条1項に記されたルー […]

従業員を新規採用する場合、企業は応募者の書類を従業員の代表機関である事業所委員会(Betriebsrat)に提示したうえで、選考結果への承認を得なければならない。これは事業所体制法(BetrVG)99条1項に記されたルールである。では、事業所委に対しては一次選考などで振い落した応募者の書類も提示しなければならないのだろうか。この問題をめぐる係争で最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が昨年10月の決定(訴訟番号:1 ABR 10/13)を下したので、ここで取り上げてみる。

裁判は全国に計390店舗を展開する衣料品販売チェーンを相手取ってフレンスブルク店の事業所委員会が起こしたもの。同社は全国を15地区(エリア)に分けたうえで、各地区に1カ所オフィスを設置している。

同オフィスはエリア全体の採用募集を行ったうえで、一次選考も実施。エリア内の各店舗の店長は同選考を通った応募者のなかから採用する人材を決める。店長に送付される書類は一次選考を通過した応募者のものだけで、不合格となった人の書類は送付されない。

フレンスブルク店の店長は2011年秋、一次選考を通過した応募者のなかから採用する人を決定し、事業所委員に通知した。その際、所属するエリアのオフィスから送られてきたすべての書類を事業所委に閲覧させた。

これに対し、同委は一次選考で不合格となった応募者の書類も今後は閲覧させるよう11月16日付の文書で要求。その後の募集でも閲覧できなかったため提訴した。

下級審のシュレスヴィヒ・ホルシュタイン州労働裁判所は原告の訴えを認める決定を下し、最終審のBAGも原告勝訴を言い渡した。決定理由で裁判官は、一次選考で不合格となった人を含む全応募者の書類を閲覧しなければ、事業所委員会は適切な判断を下せないと指摘。また事業所委には、雇用主(ここでは一時選考を行うオフィス)によって不合格とされた応募者について雇用主とは異なる見解を提示するチャンスが与えられなければならないとの判断を示した。