欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2015/1/5

EU産業・貿易

欧州委が税優遇措置に関する調査拡大、全加盟国に情報提供を要請

この記事の要約

欧州委員会は12月17日、すべてのEU加盟国に対して、企業と結んでいる税務上の取り決めについて詳細情報の提供を要請すると発表した。欧州委はルクセンブルクなどの課税措置について調査を進めているが、多国籍企業の課税逃れに対す […]

欧州委員会は12月17日、すべてのEU加盟国に対して、企業と結んでいる税務上の取り決めについて詳細情報の提供を要請すると発表した。欧州委はルクセンブルクなどの課税措置について調査を進めているが、多国籍企業の課税逃れに対する批判が高まるなか、調査を拡大して加盟国が実施している法人税優遇措置などの全容把握を急ぐ。

欧州委は各国政府に対し、2010~13年に結んだ課税措置に関する取り決めの具体的な内容と、対象企業のリストを提出するよう求めている。このほか「パテントボックス」と呼ばれる特許権などの知的財産から生じた所得に対する法人税の軽減措置に関しても、英国、フランス、スペイン、ルクセンブルク、オランダなど10カ国に対して情報提供を求めたことを明らかにした。

欧州委のフェスターガー委員(競争政策担当)は声明で、「特定の企業を対象とする税制上の優遇策によって単一市場における競争が阻害されていないか、競争が歪められているとすればどこに歪みが生じているかを特定するため、加盟国が実施している課税措置の全体像を把握する必要がある」と説明。各国政府からの情報提供とこれまでの調査結果を基に、企業の課税逃れを防ぐための取り組みを強化する方針を強調した。

加盟国と企業が税務上の取り決めを結ぶこと自体は違法ではないが、誘致や雇用創出の見返りとして適用される優遇措置が多国籍企業による課税逃れを助長しているとの批判が高まっている。欧州委は昨年6月、米アップルに対するアイルランド、米スターバックスに対するオランダ、伊自動車大手フィアットに対するルクセンブルクの税優遇策が特定の企業に対する国家補助を禁じたEU法に違反する疑いがあるとして、3カ国に対する本格調査を開始。10月にはルクセンブルクが米アマゾン・ドット・コムに適用している優遇措置についても調査を開始している。