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2013/1/9

経済産業情報

新冷媒問題でダイムラーに援軍、ADACがR744推奨

この記事の要約

2013年が導入期限となっているカーエアコン用新規冷媒「R12345yf」の採用を正式に見合わせた唯一の自動車メーカーであるダイムラーに援軍が現れた。全ドイツ自動車クラブ(ADAC)は未公開のポジションペーパーの中で、二 […]

2013年が導入期限となっているカーエアコン用新規冷媒「R12345yf」の採用を正式に見合わせた唯一の自動車メーカーであるダイムラーに援軍が現れた。全ドイツ自動車クラブ(ADAC)は未公開のポジションペーパーの中で、二酸化炭素(CO2)を成分とする「R744」をR1234yfに代わる安全な冷媒として推奨。同冷媒を使用したカーエアコンの開発を後押しする方針を示した。欧州最大の自動車連盟であるADACがR1234yfに反旗を翻したことで、ダイムラーは強力な味方を得た格好だ。ADACの資料を独自入手した『フランクフルター・アルゲマイネ』紙が3日付で報じた。

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EUでは地球温暖化防止策の一環として、これまでカーエアコン用冷媒として使われてきた代替フロン(R134aなど)に代わり、地球温暖化係数(GWP)150以下の冷媒を使用することが11年から義務化された。独自動車メーカーはこれを受けて、米ハネウェルとデュポンが共同開発したR1234yfの採用を決めたが、同冷媒の製造拠点がある中国の規制強化で安定供給が遅れたため、昨年12月まで導入が猶予されていた。

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ダイムラーが同冷媒に背を向けた理由は安全性に対する懸念だ。同冷媒は従来の不燃性冷媒と異なり、わずかながら燃焼性がある。メーカーは安全性を強調するものの、ダイムラーは独自に実施した衝突試験で引火性が確認されたとして昨年9月、同冷媒の採用中止を決定。新冷媒の使用で型式認定を受けた新型「Aクラス」「Bクラス」およびスポーツカー「SL」の3モデルで引き続き旧冷媒を使用している。新冷媒の導入猶予期間は昨年末で切れたため、ダイムラーは規定違反で多額の罰金を科されるか、最悪の場合、型式認定を取り消される可能性があると業界関係者は指摘する。

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ダイムラーはこうした罰則を意に介していないようだ。同社の広報担当者はメディアの取材に対し「EUや独連邦陸運局(KBA)とこの問題について協議を進めているが、話し合いは順調に進んでいる」と述べ、実際に罰則が適用される可能性は低いとの見方を示した。独自動車工業会(VDA)は「少なくとも半年以上、猶予期間延長が必要」としてダイムラーの対応に理解を示している。

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