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2013/1/9

ゲシェフトフューラーの豆知識

事業所委に給与の閲覧権あり

この記事の要約

従業員の代表機関である事業所委員会(Betriebsrat)は被用者の採用、待遇、解雇などについて共同決定権を持つ。この業務を遂行するためには当然のことながら、経営陣が持つ情報の共有が必要になる。では、被用者の個人情報に […]

従業員の代表機関である事業所委員会(Betriebsrat)は被用者の採用、待遇、解雇などについて共同決定権を持つ。この業務を遂行するためには当然のことながら、経営陣が持つ情報の共有が必要になる。では、被用者の個人情報に関する情報についても事業所委には閲覧する権利があるのだろうか。この問題に関する係争でニーダーザクセン州労働裁判所が昨年4月に決定(訴訟番号:16 TaBV 39/11)を下したので、ここで取り上げてみる。

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裁判を起こしたのは神経外科病院の事業所委員会。同病院では一部の被用者に対し、労使協定に基づかない給与・手当が支給されている。

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事業所委は2010年8月、各被用者に同年4月に支給された給与について詳細な情報を提供することを雇用主に要求した。これに対し雇用主は、被用者の半数は事業所委が給与書類を閲覧することを拒否していると指摘。事業所に給与書類の閲覧を認めることはドイツの連邦データ保護法(BDSG)と個人情報の保護に関する欧州連合(EU)指令(Richtlinie 95/46/EG)に抵触するとして同委の要求を受け入れなかった。事業所はこれを不当として提訴した。

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第1審のハノーバー労働裁判所は原告の訴えを認め、第2審のニーダーザクセン州労裁も1審決定を支持した。決定理由で裁判官は、被用者の給与を閲覧しないと事業所委員会は◇賃金協定と労働法上の平等原則が遵守されているかどうかを監視する義務を遂行できない◇事業所内における賃金の共同決定権も行使できない――と指摘。事業所委には閲覧権があるとの判断を示した。連邦データ保護法(BDSG)と個人情報の保護に関する欧州連合(EU)指令に抵触しないとしている。

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裁判官は上告を認めた。

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