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2013/7/24

総合 - ドイツ経済ニュース

独移動通信4位が3位買収で合意、最大手に浮上

この記事の要約

電気通信大手テレフォニカ(スペイン)の独子会社Telefonica Deutschlandは23日、蘭KPNの独移動通信サービス子会社E-Plusを買収することで合意したと発表した。取引が成立するとTelefonica […]

電気通信大手テレフォニカ(スペイン)の独子会社Telefonica Deutschlandは23日、蘭KPNの独移動通信サービス子会社E-Plusを買収することで合意したと発表した。取引が成立するとTelefonica Deutschlandの顧客数は約4,300万人に達し、独携帯電話サービス市場で最大手となる見通し。Telefonica DeutschlandとE-Plusは現在それぞれ市場4位、3位に付けている。

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Telefonica DeutschlandはKPNに現金50億ユーロを支払う。また、KPNはTelefonica Deutschlandの資本17.6%を取得する。これに伴いテレフォニカの出資比率は76.83%から65.0%に低下、浮動株比率も23.13%から17.4%に下がる。買収に伴うシナジー効果は大きく、2019年までに50億~55億ユーロに達する見通しだ。

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取引の成立には株主と独禁当局、電気通信監督当局の承認が必要。Telefonica Deutschlandは買収手続きが来年半ばに終了すると見込んでいるものの、独市場の寡占が進むため当局の審査は難航するとの指摘もある。

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欧州連合(EU)の欧州委員会向けに移動通信市場の定期報告書を作成するコンサルティング会社Rewheelの関係者は『ハンデルスブラット』紙に対し、ドイツの移動データ通信料金は極めて高いと指摘。独自の通信網をもつ市場プレイヤーの数が現在の4社から3社に減ると、競争が弱まり価格の下方硬直性は一段と高まるとの見方を示した。「わが社(Rewheel)は(両社)の合併を否定的にみており、欧州委にはそうした見解を伝える」としている。

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独移動通信市場では昨年第4四半期現在、ドイツテレコム傘下のTモバイルが最大手で、顧客数は3,660万人に上る。これをボーダフォン D2が3,390万人で追う。E-PlusとTelefonica Deutschland(O2ブランドで移動通信事業を展開)はそれぞれ2,340万人、1,930万人と、上位2社に大きく水をあけられている。テレフォニカとKPNは昨年、Telefonica DeutschlandとE-Plusの合併協議を行ったが、破談になった経緯がある。

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両社がTelefonica DeutschlandとE-Plusの合併を目指す背景には独移動通信サービス市場の成長が頭打ちとなるとともに、巨額の投資も必要になっていることがある。

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携帯電話サービス各社はスマートフォンが普及するまで、SMS(ショート・メッセージ・サービス)で利益を確保してきた。だが、スマートフォンが普及したことでSMSの需要は激減している。

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スマートフォンのユーザーはネットサーフィンを行うため、通信量が大幅に増加している。これに対応するため各社はデータ量が多いコンテンツを短時間で送受信できるLTE通信網の構築に取り組んでいる。だが、敷設コストは高く、経営規模の小さい事業者には負担が重い。Telefonica DeutschlandとE-Plusは合併により投資能力を高め、Tモバイルなどを追撃する意向だ。

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KPNは経営不振に陥っており、同日発表した2013年4-6月期の売上高は前年同期比8.1%減の29億3,000万ユーロに縮小。純利益は68%減の1億800万ユーロに落ち込んだ。同社はE-Plusの売却益を財務の強化と、14年に予定している配当再開の資金に充てる。

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