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2013/11/6

ゲシェフトフューラーの豆知識

「法規に違反しても輸送を完遂せよ」、ドライバーの損賠請求権は?

この記事の要約

法規に違反してでも輸送業務を遂行せよとの命令を雇用主から受け、実際に罰金を科された場合、ドライバーは雇用主に損害賠償を請求できるのだろうか。この問題をめぐる係争でハム州労働裁判所が7月に判決(訴訟番号:8 Sa 502/ […]

法規に違反してでも輸送業務を遂行せよとの命令を雇用主から受け、実際に罰金を科された場合、ドライバーは雇用主に損害賠償を請求できるのだろうか。この問題をめぐる係争でハム州労働裁判所が7月に判決(訴訟番号:8 Sa 502/13)を下したので、ここで取り上げてみる。

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裁判はトラックの運転手が雇用主である運送会社を相手取って起こしたもの。雇用主は従業員に対し日ごろから、法律(EU法)で定められた運転時間の許容上限を超過し罰金を科された場合は、その分を会社が引き受けると明言していた。また、命じられた配達業務を計画通りに完了できない場合は解雇も辞さないと述べ、従業員に不当な圧力をかけていた。

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原告は運転時間の法的な許容基準をオーバーし、罰金およそ5,000ユーロの支払いを命じられた。これを受けて雇用主に支払いを要求したところ拒否されたため、提訴した。

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1審のアルンスベルク労働裁判所は原告勝訴を言い渡したものの、2審のハム州労裁は逆転敗訴を言い渡した。判決理由で裁判官は、雇用主の行為が公序良俗に反することを確認しながらも、原告が雇用主に支払いを要求できるのは雇用主から不当な圧力を受けていた事実を具体的なケースで証明できる場合に限られると指摘。原告は不当な圧力を受けていた一般的な状況しか説明できておらず、支払いを請求できないとの判断を示した。最高裁への上告は認めなかった。

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