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2012/7/18

経済産業情報

ウイルスを鋳型に半導体素子作成

この記事の要約

電界効果トランジスター(FET)の半導体素材として使われる酸化亜鉛(ZnO)の薄膜をこれまでより簡単に作成する手法を、シュツットガルト大学などの研究チームが開発した。さお状のタンパク質であるタバコモザイクウイルス(TMV […]

電界効果トランジスター(FET)の半導体素材として使われる酸化亜鉛(ZnO)の薄膜をこれまでより簡単に作成する手法を、シュツットガルト大学などの研究チームが開発した。さお状のタンパク質であるタバコモザイクウイルス(TMV)をテンプレートとして使用し、TMVの表面をZnOの超薄膜で被膜するのがポイント。室温に近い60度の環境下で成膜できるうえ、「型紙」に使ったTMVはZnOとの複合材としてそのまま利用できるため、除去などの後処理は一切不要という。

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TMVは人類史上初めて発見されたウイルス。長さ300ナノメートル(nm)、直径18nmで、棒状の形をしている。

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ナノ構造の分子をテンプレートにして大面積の薄膜に転写する技術は、リソグラフィーや電子ビームといった従来の加工技術の精度限界を超える新たな技術として近年、注目を集めている。TMVは分子数や形状が非常に安定しており、ナノワイヤーのテンプレートとしての応用に向けた研究が進められている。

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FETは半導体基板と導体(金属)の間に絶縁体(酸化膜)を挟み込む3層構造をしており、「ゲート」「ドレーン」「ソース」の3つの端子を持つ。制御用電力が少ないため大規模集積回路(LSI)のほとんどで使われている。ゲートの絶縁に金属半導体酸化膜(MOS)を用いることからMOSFETとも呼ばれる。

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シュツットガルト大とダルムシュタット工科大の研究チームはまず、ポリシリコンの導体基板(ゲート端子として機能)と絶縁体(酸化ケイ素)を重ね、ソースとドレーンを両端に配置したプレートを作成。その後、ソースとドレーンの間にTMVを散らし、反応溶液に浸してTMVの表面にZnOを析出させた。ZnOは自己組織化によって規則的に配列した。

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作成したZnO・TMV複合素材のトランジスター性能を測定したところ、ZnOだけの場合より明らかに高いことが認められた。原因は特定できなかったものの、研究チームはTMV分子が電子の輸送特性にプラスに働くためと推測している。

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研究成果は『Advanced Materials』誌に掲載された。

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