欧州経済の中心地ドイツに特化した
最新の経済・産業ニュース・企業情報をお届け!

2011/11/30

ゲシェフトフューラーの豆知識

病休で未消化の有給休暇、無制限には取得できず

この記事の要約

各年度の年次有給休暇は遅くとも翌年3月末までに消化しなければならないとするドイツの有給休暇法(BUrlG)1条の規定を長期間病欠した被用者にも適用することは欧州連合(EU)法に違反するとの判決を、欧州司法裁判所(ECJ) […]

各年度の年次有給休暇は遅くとも翌年3月末までに消化しなければならないとするドイツの有給休暇法(BUrlG)1条の規定を長期間病欠した被用者にも適用することは欧州連合(EU)法に違反するとの判決を、欧州司法裁判所(ECJ)は2009年1月に下した。これについては本誌09年1月28日号ですでにお伝えした。では病欠期間が何年にも及ぶなど極端に長い場合でも被用者には未消化の有給休暇をすべて取得する権利があるのだろうか。この問題についてECJが22日に判決(訴訟番号:C-214/10)を下したのでここで取り上げることにする。

\

裁判を起こしたのは機械メーカーKHSに1964年から勤務していた元社員のシュルテ氏。同氏は2002年に心筋梗塞となり、08年8月に雇用関係が終了するまで病休していた。退職に際して未消化となっていた年次休暇のうち06~08年の期間について金銭に換算して支給するよう要求したが、病休で未消化の有給休暇を取得する権利は各年度末の15カ月後に消滅するとした労使協定があったため、雇用主は請求された額の一部しか支給しなかった。原告のシュルテ氏はこれを不服として提訴した。

\

第2審のハム労働裁判所は、この問題はEU法(欧州指令2003/88/EG)に関わると判断、ECJの判断を仰いだ。

\

ECJが下した判決は、有給休暇の持ち越しを15カ月に制限した労使協定はEU法に抵触しないというものだった。判決理由で裁判官は、有給休暇の目的は被用者を心身の疲れから回復させることにあると指摘。そうした回復効果は有給休暇の日数が一定限度の範囲内であれば時間の長さに比例して高まっていくが、一定期間を超えると効果は頭打ちになるため、有給休暇の持ち越し日数を制限することは不当でないと言い渡した。

\

また、病気で未消化の有給休暇を無制限で持ち越せるとすると、雇用主は引当金を積み立てていかねばならず、事業や雇用に影響が出るとも指摘。この観点からも持ち越し制限は妥当だとの判断を示した。どの程度の日数の持ち越しが妥当かについては見解を提示していない。

\